決算が終わって
Hieronymus Legion バックオフィス 人工知能
おごちゃん
決算処理が終わり、無事申告できました(弊社の期末は7月)。
今年はMCPも作ったので、できる限り伝票の手入力をやめてみることにしました。
結果的にはほぼ伝票の手入力なしで行うことができましたが、そこで色々考えたこと等があるので、まとめておきます。
はじめに
弊社の会計処理は当然ながら全てHieronymus上で行っています。 犬の餌は自分で食べに行く(dog fooding)スタイル… と言うよりは、弊社の業務の必要で開発したのがHieronymusです。 この辺の経緯は前弊社のブログに書いてあります。
だいたい決算が来る度にちょっとづつ強化されていて、法人が青色申告するために必要な機能は十分用意されています。 とは言え、「申告やまとめは税理士に依頼する」ことを前提としています。 つまり、申告書を作ることまではしていません。 そこはプロの手に任せるべきだと思っているからです。
そういった前提でHieronymusは開発されているのですが、今回はここにMCPを付加して「AIが会計をする」ことを可能にしました。
動作概要
構成
作ったMCPはLegionが操作します。 とは言え、MCP自体は殊更にLegionに依存したものではありません。 OpenCodeなら問題なく動くはずですし、多分他のエージェント上でも動くでしょう。
会計に必要なskillも簡単なものですが作りました。 よく見たら作った覚えのないskillもあるんですが、これは多分「三谷さん」が作ったのでしょう。
これをLegionのweb chatから操作しています。
証憑がアップロードされたらエージェントがOCRします。 その情報を元に起票します。 OCRについてはマルチモーダルのモデルを使っています。
運用
こんな感じで証憑をアップロードして、必要な事項を教えて、起票したり証憑の保存をしてもらったりしています。
このキャラクタが「三谷さん」で「経理のおばさん」をイメージしたペルソナになっています。
つまり、経理の人にレシートや領収書渡して、「これ○○のレシートだから適当に処理しておいて」という感じのオペレーションをするようにしました。
証憑(通帳のコピー等も含む)を渡して起票してもらうオペレーションについては、ほぼ完全自動でできるようになりました。
仕訳のルールについては、証憑を渡す時に「これは○○費で仕分けておいて」とか「貸方は仮払金で」と言っておけばいい感じでやってくれます。 またそれを一度させておくと学習して、「ルールベース」的なファイルにも記録されて、次からは「これよろしく」でだいたい処理してくれます。 「不明なことがあったら聞いて」と言っておけば、わからないことは聞いて来ますから、そこで指示すれば把握してくれるようになります。 つまり、最初から全自動でやってくれるわけではないですが、作業をさせるうちに学習して、いい感じに働いてくれるようになります。
「三谷さん」が入れた伝票は全て「未承認」状態になっているので、これを私が確認して「承認」します(元々あるHieronymusの標準オペレーション)。 私の作業は主にこの「承認」だけとなりました。
評価
良い点
電子化された証憑や通帳を入力した場合、ほぼ間違いなく処理してくれました。
これは何が書かれているか等を一々言わなくても、証憑の中の必要事項を抽出して情報を拾ってくれます。 ルーチンで取引のある証憑についてはすぐに慣れてしまうので、渡すだけで全部やってくれます。 慣れてしまったものは、「このフォルダにある証憑処理して」という雑なオペレーションが通用します。
最初から電子化されている証憑については、OCRのミスもありませんでした。
通帳から支出したものについては、通帳上の情報と証憑と二重に情報があるのですが、そこの整合性を確認したり、通帳から生成した伝票にうまく証憑を紐付けたりもしてくれて、実にいい感じの処理をしてくれました。
また、これは副産物なんですが、後述の「ダメな点」では「元々紙だったものの処理」を問題点として挙げてはいるのですが、ダメではあっても「紙もスキャンする」というオペレーションになったために、全ての証憑が電子化されるようになりました。 スキャンはちょっと面倒なのですが、「紙の証憑の保存」をしなくて済むようになったので、色々楽になりました。 まぁ原本ということで一応保存してはいますが、「伝票書いてインデックスにする」というオペレーションをしなくなったので、伝票用紙がいらなくなりました。
弊社の決算だと、「年度末だけにある特別な仕訳」は期の最後の日に置くことにしています(特別な日や月を使ったりする流儀もあるようですね)。 ここには普段やらない仕分けがあるのですが、これも「去年のを見て学習して」って指示したので、だいたいのところは自動になりました。 前はここだけで随分税理士とやりとりしたのですが、今回はほぼノーミスで終わりました。
ダメな点
最初から電子化されていない証憑(レシートとか)は品質マチマチです。
電子化されてない証憑は伝票単位くらいでまとめてスキャンして渡すのですが、
- 複数枚証憑があると処理忘れが発生する
- スキャナの天地がオペレータにはよくわからないので上下反転でスキャンした画像を渡してしまう
- 証憑の向きや角度によってはうまく証憑が切り出せない
- 物によってはうまくOCRできない
というような問題が発生しました。
これらについては、もうちょっと色々調整が必要だろうと思います。
最後に挙げている「うまくOCRできない」のは、某宅急便会社のハンディプリンタのレシートで、これは感熱紙であることもあって保存すると激しく退色してしまうことと、そもそも印字品質が悪くて私が目視で起票しようとしても読めなかったりということで、ちょっとどうにもなりませんね。 これは必ずしもエージェントの問題とは言えませんね。
まとめ
こんな感じで今年の決算はAIエージェントの威力もあって、決算自体はスムーズに行きました。 エージェント側の改良にちょっと手間がかかったりしたのですが、それは来年はしなくていいことです。
そんなわけで、Hieronymusは外部のエージェントから操作可能になりました。 想像していたように、効果は絶大でした。
展望
そういったわけで、「会計システムにMCPを入れる」のは効果絶大だということがわかりましたが、同時にオペレーション上の問題もわかって来ました。
一番面倒臭いなと思ったのは、一々「三谷さん」と会話をしなければならないということです。 「三谷さん」は業務の性格に合わせて結構細かくてうるさいペルソナに設定していますので(この方が仕事は上手くやる)、会話しているとちょっとイラっとしたりします。
もちろん最初は「この証憑はこーゆーものだよ」ということを教える必要がありますから、会話することは必要です。 結果が常に正しいというわけでもありませんから、こちらからつっこむこともあります。 逆に不明な点は聞かれたりします。 こういったことは必要なことです。
他方、同じような証憑を処理する時はこの一々会話することが面倒臭くなります。 右から左で処理して欲しい時、「三谷さん」ではなくて「自動証憑処理機」でいいのです。
そういったことを考えて行くと、「MCPで操作できるのは悪くはないが、会計システム独自のインターフェイスが存在している方がもっといいな」というように思いました。
また、Hieronymusでは「とにかく振替伝票を書け」というのが中心的なオペレーションなんですが、実際にやっていることのほとんどが「精算」です。 もうちょっと抽象的に考えるなら、決算日にある特殊な仕分け以外は全部「精算」 だと言っても良いでしょう。
そう考えると、「精算」のための画面を用意して、そこで必要事項を入力したり証憑をアップロードしたりして、それを元に内部的なエージェントが起票するというようにすれば、より合理的になるように思います。 次のHieronymusのバージョンアップの時には、この操作を入れようと考えています。
他方、会計データを元にあれこれ考えるとか分析するとかとなると、会計システムの中でやるよりはエージェントを強化した方がスムーズになるだろうと思います。 要するに「餅は餅屋」であり「餅とは何か」という話となります。 そう考えると、「両方あった方が嬉しい」ということになりますね。